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かごの中の人面蝶 【ナイショの妖精さん 2】
「人面蝶。これ、食べる?」
カチャって、かごの入り口が開いて、イチゴがひとつ、入ってきた。
……え? ウソ! うれしいっ!
「いただきます」って声に出しそうになって、あわてて口を自分の手でおさえる。
しゃ、しゃべっちゃ、ダメっ!
妖精の体だと、イチゴは巨大で、抱きまくら並みのサイズ。かじりついたら、甘い汁が口いっぱいに広がった。
おいしい~。
「やっぱ、このチョウ、和泉(いずみ)に似てるな~」
あたしは、ハッとして、イチゴから顔をあげた。
かご越しに、アップになってる誠の顔。
黒目がちのクリクリ目が寄り目になって、じ~っと、あたしを見つめている。
気づかれたっ!?
もうここで「逃がして」って、言っちゃったほうがいい?
「和泉って、カワイイよな~。『アホっ子、アホっ子』って、みんな言うけどさ~。でも……和泉って、葉児とつきあってんのかな~?」
誠はかごから目をはなして、勉強づくえのイスに、ギって腰かけた。
ええっ!? なにそれっ!
誠、今、あたしのこと「カワイイ」って言ったっ!?
それにあたし、ヨウちゃんとは、教室じゃほとんど話もしてないのに、どうして「つきあってる」なんて思えるのっ !?
あ~、もう! 声、出しちゃいたいっ !!
誠は、つくえの上に、ぼ~っとうつぶせになって、上の空。
「葉児はいいなぁ~。女子に好かれまくりだもん。本命できたら、かんたんに落としちゃえるんだろな~。オレも、あの十分の一でいいから、カッコよければな~……」
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